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ホーム > 組織別情報 > 経済産業部 > 農林技術研究所 > 研究所ニュース > 詳細

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更新日:2022年10月1日

静岡県農林技術研究所

No.77/ 2022年10月/ 研究所ニュース

視点

果樹研究センターでの取り組みについて センター長 松浦 英之

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浮皮が発生しにくい特性をもつ「春しずか」

 静岡県は気候風土に恵まれ、かんきつを中心とした様々な果樹の栽培が行われています。しかしながら、近年の気候変動による果実生産への影響が顕在化しており、温州みかんでは、浮皮、日焼け、着色不良・着色遅延のほか、発芽・開花期の前進、病害虫発生時期の変動、果実腐敗など、様々な悪影響がみられ、果実の安定生産に支障をきたすリスクが高まっています。
 そこで、果樹研究センターでは、令和2年度から新成長戦略研究として、「気候変動に対応した超晩生温州みかんの早期普及とみかん産地静岡の生産力強化」(令和2~6年)に取り組んでいます。内容としては、当センターが理化学研究所と共同で新たに育成した浮皮が発生しにくい超晩生温州みかん‘春しずか’についての県内主要産地における生育特性の解明と、栽培マニュアル作成による早期普及の促進や、ドローンによるセンシングとAI技術活用による樹の生態情報の取得や栄養状態の診断技術の開発、肥培管理、根の活性化等による隔年結果是正技術の開発などを通じて、気候変動に負けない静岡みかん生産力強化のための技術構築を目指します。
 近年、我が国における果実生産は、農業経営体の減少や高齢化により減少傾向にあり、消費需要を満たすことが困難な状況になってきています。国などは、これまでの生産調整から、生産力を強化する方向に施策転換しています。そこで、果樹研究センターでは、社会、経済、環境などの諸問題を踏まえつつ、果樹栽培の高収益化を実現するため、特に労働生産性、土地生産性を向上させる研究開発に注力することで、本県果樹産地の持続的発展に貢献していきたいと考えています。

研究情報

近赤外分光法を利用したトマト軟果玉の非破壊選別技術

画像:透過型近赤外線分光装置

透過型近赤外線分光装置

 トマト生産において、生理障害果の発生は大きな問題となっており、その中で果実が柔らかくなり、日持ち性が低下する軟果玉は発生率が高く、正常な果実と外見上の違いがないため見極めが難しくなっています。このため、選果は人の触診によって行われており、大きな労働負担となっています。そこで当研究所では、近赤外分光装置による軟果玉の非破壊選別技術の開発に取り組みました。
 JAの選果場にて軟果玉と判別されたトマト369玉と出荷基準をクリアしたトマト480玉を近赤外線分光装置によって透過光を測定し、それぞれの硬さの違いから、軟果玉を選別できる技術を開発しました。
 開発した技術は軟果トマトの予測精度が89.8%と高精度でした。更に、判別するトマトを時期ごとや圃場ごとに限定することで判別精度のさらなる上昇が見込まれます。また、ハンドタイプの近赤外線装置を用いることで、圃場で軟果玉の判別が可能であることも確認しました。今後、この技術の応用によりトマト選果場の労働負担が低減し、トマト品質の向上が期待できます。
(農林技術研究所 加工技術科 研究員 宗野 有雅)

各種企業から注目されている「香り緑茶」の今後の取り組み

画像:香り緑茶のポジショニング(上)、商品化された香り緑茶(下)

香り緑茶のポジショニング(上)、商品化された香り緑茶(下)

 茶業研究センターでは緑茶の新たな需要を喚起するため、無添加で茶の香りを高める研究を平成20年度から開始しました。平成28年度にほんのりと甘い花のような香りのする「香り緑茶」製造技術を確立し、平成30年からは農研機構のプロジェクトにおいて、香り緑茶の大量製造装置を現地茶工場に導入・実証し、商品化に至っています。
 近年リーフ茶の需要が減少する中で、複数の企業が新しいカテゴリーとして「香り緑茶」を使用した新商品開発の可能性を模索しており、当科への問合せも急増しています。
 これは生産者にとって需要拡大の大きなチャンスですが、現状では大規模な生産工場は限られており、産地としては企業が求める大ロットの香り緑茶を供給することができません。
 そこで当センターでは、香り緑茶の大幅増産を目指して、来年度から導入及び運転コストを低減した製造装置の開発、香り緑茶の製造工程や品質基準の策定を行う新規課題「香り緑茶の大量安定生産と品質管理技術の確立」に取り組みます。
     (茶業研究センター 新商品開発科 研究員 鈴木 夏織)


お問い合わせ先

静岡県農林技術研究所
〒438-0803 静岡県磐田市富丘678-1
電話番号:0538-35-7211 ファックス番号:0538-37-8466