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更新日:2023年7月28日

静岡県農林技術研究所

No.82/ 2023年8月/ 研究所ニュース

視点

これまでの100年 これからの100年  所長 岩﨑 敏之

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 農林技術研究所は、磐田市にある本所のほか、茶業、果樹、伊豆農業、森林・林業の4つの研究センターがあります。その歴史は古く、本所は明治33年(今から123年前)に安倍郡豊田村曲金(現静岡市)に「静岡県立農事試験場」として創設されました。その後、昭和11年に静岡市北安東に移転、昭和36年に「静岡県農業試験場」に改称し、昭和55年に現在の磐田市富丘に移転しました。平成19年に、各試験場を統合「静岡県農林技術研究所」に再編しました。
 これまでの成果の一部を紹介しますと、品種育成では、いちごの2品種があります。「紅ほっぺ」が平成14年に、「きらぴ香」は、平成29年に品種登録されました。令和4年度における県内の作付面積は、JA系統で約75%が「紅ほっぺ」、17%が「きらぴ香」となっています。
 水稲では、酒造好適米品種の「誉富士」を育成、平成21年に品種登録され、県内酒造業者26社が使用し、「誉富士」の地酒を製造、販売しています。さらに、収穫量が多い「令和誉富士」を新たに育成、昨年、品種登録出願し、今年から現場で栽培が開始されています。
 栽培技術の成果では、平成2年から4年に、根域制御によりトマトの糖度を高くする栽培法の研究に取り組み、低段で密植とする新たな養液装置を開発しました。その後、この技術が基となり県内で多くの高糖度トマトが作られるようになりました。
 花きの成果では、バラ栽培において、冬季は暖房の経費削減、夏季は夜間冷房による品質向上のための方法について平成19年から21年にかけて研究し、従来の重油燃焼式暖房機と電気式ヒートポンプを組み合わせたハイブリッドシステムを開発しました。
 温室メロンでは、薬剤抵抗性の発達が深刻な問題となっている害虫に対し、青色、緑色の光は、成虫を強く誘引し、赤い光は成虫の飛来を抑制することを明らかにしました。一定の範囲の波長の赤色光をメロン等に日中照射して、ミナミキイロアザミウマ等の定着及び産卵を抑制する方法を令和元年に特許を取得、この技術を民間企業に利用許諾し、商品化につながっています。
 これまで100年を超える年月において、多くの研究者が県内農業の発展のため、地域に密着した技術開発を続けてきました。これからも、ゲノム情報を活用した育種、AIを活用した環境制御技術の開発、有機農業に対応した病害虫防除技術の構築、ドローンセンシング等による土壌診断、植物栄養状態の迅速測定と肥培管理技術の開発、機械・ロボットと人間が協調する新たな作業体系の構築、機能性を増強する食品加工技術の開発など、時代のニーズへの対応、先取りにより、100年先までも生産者、消費者の皆様に役立つ新たな研究を続けることを目指していきます。

研究情報

大麦由来発酵濃縮液肥を利用したウンシュウミカンの早期成園化

画像:図 液肥施用の有無による地上部の生育の違い

図 液肥施用の有無による地上部の生育の違い

 ウンシュウミカン栽培では、苗木を定植した後の3~5年間は果実を成らせず、枝を伸ばし樹冠の拡大に努めるため、管理経費はかかりますが果実収穫がない未収益期間となります。経営を安定させるためには、定植後の未収益期間を短縮するとともに樹冠拡大による収量増加が求められています。しかし、単に肥料を増肥しても根に障害が発生し期待するような樹冠拡大は望めません。
 当センターでは、様々な液肥を検討するなかで、苗木の生育促進技術について知見を得ました。定植前ほ場に堆肥等を施用し苗木を4月に定植後、化成肥料を施用するとともに10倍希釈した大麦由来発酵濃縮液肥を5月に複数回に分け、計50L/樹を土壌に施用しました。定植2年目も化成肥料の施用とともに発酵濃縮液肥10倍希釈液を3、4月に計50L/樹土壌施用しました。その結果、定植3年目には発酵濃縮液肥を施用した液肥区は、施用しなかった対照区に比べ樹冠が拡大し、初期収量が増加しました。
 液肥を施用するため資材費が対照区と比べ多くかかりますが、初期収量が増加するため収穫開始2~3年後には資材費の回収が期待されます。

(果樹研究センター 果樹環境適応技術科 科長 江本勇治)

紫外線照射によるワサビのうどんこ病防除

画像:図 照射3か月後のワサビ苗(左:無照射 右:紫外線照)

図 照射3か月後のワサビ苗(左:無照射 右:紫外線照)

 近年、わさび田に植える苗が不足しており、大量生産に適した実生苗の栽培研究を行っています。育苗期間中は、様々な病害虫が発生しますが、特に発生の多い病気としてうどんこ病があります。うどんこ病は多発すると葉が枯れてしまい、苗の生育に大きな影響を及ぼします。しかし、ワサビでは使用できる化学農薬が少なく、薬効期間の短い物理的防除剤を高頻度で散布しており、生産者の負担が大きくなっています。
 そこで、イチゴのうどんこ病防除で実用化されている紫外線照射技術をワサビでも利用できないか調査しました。夜間に1時間照射をすることで3か月間の栽培期間中に農薬散布を一度も行わなくても、十分な防除効果を示しました。
 紫外線ランプ等の初期導入コストや電気代が必要ですが、散布回数が減ることで、散布に必要な農薬代や人件費を削減でき、経費は10aあたり1年で1万円程度の削減となります。また、作業負担の大きい農薬散布を減らせるため、生産者の労働環境の改善にもつながります。

(伊豆農業研究センター わさび生産技術科 上席研究員 片井祐介)


お問い合わせ先

静岡県農林技術研究所
〒438-0803 静岡県磐田市富丘678-1
電話番号:0538-35-7211 ファックス番号:0538-37-8466