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更新日:2023年9月27日
静岡県農林技術研究所ホームページ
研究所が実施している研究課題は、関係団体等から生産現場の研究要望を受けて計画の立案をスタートします。昨年度末に集められた研究要望には、最近の肥料高騰への対策や伊豆特産果樹の栽培技術に関するものなど、最近の社会情勢や本県農業の特徴が反映された要望が届きました。
研究要望を受けて、研究所の担当科は国内外の研究状況を確認し、解決すべき技術的課題を明確にした後に、研究課題の計画を立案します。研究計画は外部有識者による評価を受け、静岡県庁の関係課と協議後に、正式に研究の実施が決定され、翌年度から3年間(新品種育成は5年間)、試験研究に取組んで参ります。
研究実施により得られた成果や新技術は、関係団体への報告会等を通じて生産現場に報告させて頂くとともに、農林事務所と連携した実証試験等により新技術の社会実装に努めています。
また、新聞報道や研究所のホームページ等を通じて研究成果を幅広く公表しています。
研究所のホームページ(下図)では画面左側に「研究成果」を設け、①成果写真集、②研究成果情報及び研究報告、③あたらしい農林技術のボタンを配置しています。①は研究トピックを写真や図を用いて紹介、②は新技術等のポイントを解説、③は新技術の詳しいマニュアルとなっています。最新版は、昨年度の研究成果から①に22件、②に20件、③は8件を新たな成果をアップしましたので、ご参照いただければ幸いです。
研究所内では、森林・林業研究センターがYouTubeで研究成果の動画配信を行うなど、SNSを活用した情報発信にも取組んでいます。今後も、研究成果の分り易い情報発信に取組んで参ります。
解明した軟果の発生メカニズム
通常よりも速く軟らかくなってしまう果実を、「軟果」と呼んでいます。軟果は、出荷後に潰れやすいことから、生産者は出荷をあきらめ廃棄を余儀なくされています。県内産地を調査したところ、時期によっては、軟果によって収穫物の30%以上を廃棄する生産者もいました。このように軟果は本県トマト生産において大きな問題ですが、これまで軟果の発生原因は明らかになっていませんでした。そこで、本研究所では、軟果の発生原因と対策についての研究に取り組みました。
その結果、軟果の根本的な発生原因は、1果あたりの光合成産物の不足であることが明らかになりました。具体的な対策としては、葉を多めに残して葉面積を確保する、ECを上げる、密植を避ける、CO2施用による光合成の促進、摘果によって着果数を減らす、多潅水を避ける、等が、軟果の発生防止に有効です。また、果実が硬い品種や、節間が長く受光態勢に優れる品種への切替も有効です。
軟果の対策には、このように様々なアプローチがあります。農林技術研究所では、今後も、明らかになった軟果対策を現地に広く普及させていきます
(農林技術研究所 野菜生産技術科 上席研究員 今原淳吾)
ドローンによる航空写真と生育指標の推移
近年、茶の市場価格の低迷による離農や農家の高齢化により、小規模生産者が減少しており、担い手や農業法人へ茶園が集積されています。経営規模の拡大に伴い、全ての茶園の生育状況を把握することが困難になり、摘み遅れによる品質低下が懸念されています。そこで当センターでは、省力的に新芽の生育状況を評価するため、広域観測に優れるドローンを用いて、新芽の生育量及び成分を経時的に予測する技術の開発に取り組んでいます。使用するドローンはDJI社製Phantom 4 Multispectralです。あらかじめ飛行経路を設定することで、自動で飛行・撮影するため、基本的には操作は不要です。本機は農業用マルチスペクトルカメラを搭載しており、5つの波長の光の反射率を測定することができます。撮影した画像を合成し、各波長の反射率から生育指標値を算出することで、ほ場ごとの収量や成分を推定します。本技術が実用化することによって、大規模な茶園を管理する生産者や、JA、茶農協などの団体の茶園巡回の省力化が期待されます。
(農林技術研究所茶業研究センター 茶生産技術科 主任研究員 長谷川和也)
お問い合わせ先
静岡県農林技術研究所
〒438-0803 静岡県磐田市富丘678-1
電話番号:0538-35-7211 ファックス番号:0538-37-8466